ドクン・・・
と、またさらに闇が広がるのが分かった。
制御が難しくなり、そのまま下に降りる。
町からは大分離れ、まだ片付けられていない建物の残骸が見られる。
このままここにいて闇が暴走したら、あの魔族の思惑通りになってしまう。
その前に、ここから離れなければならない。
でもどこへ?
どこに行っても制御できなければ意味がない。
ならば残された道はただ一つ。
すなわち、
『死』をもって闇を封じること。
破壊の道に進むことなんて出来ない。
俺はここを、守りたい。
だから、何としてでも『死』を選ぶ。
そんな俺の覚悟を感じ取ったのか、闇は急に勢いずく。
「・・・っ!」
だめだ・・・っ!だめだ!!
額からは汗がにじみ出て頬を伝う。
息は荒く、もはや限界の位置に達しようとしていた。
そこへ現れた一つの気配。
うつろな目を移したその先にいたのは、
「エリエ・・・」
俺を追って、ここまで来たのか・・・?
「シャイン!」
エリエは俺を見るや否や、側に来ようとかけてくる。
近づくな!
しかし、それは声に出来なかった。
その時、闇の『声』が聞こえた。
『まずは余興を楽しもう』
やばい・・・闇はやる気だ・・・!
なおもかけてくるエリエ。
この声だけは届いてほしい。
「近づくな!逃げろ・・・!!」
それが、俺に出来る、唯一のことだった。
「・・・えっ?」
普段は見せることがない俺の表情に、思わずその場で止まるエリエ。
俺は・・・
闇の中に、入っていってしまった。
それは、自分が誰かの中に入っている、そんな感覚だった。
体は言うことを聞かないが、見るもの触るもの、全て感じる。
そして、闇も。
“俺”はただ走る。
目標に―エリエに向かって。
手に、闇を持って。
お願いだ!逃げてくれ!
闇も止まってくれ!!
闇に強く働きかけても、もう無駄だった。
二人の距離は縮まる。
だめだ!
やめろ・・・
やめろ!!
エリエは逃げず、優しく笑い、両手を広げる。
母が子を抱きしめるように、優しく。
“俺”は右手を振り上げる。
やめろ―――!!
目の前が、紅く、咲いた。
時が夕刻に戻ったかのように、紅く、紅く―・・・
体から闇が引いていく。
何故か、闇の力が抑えられたようだ。
フッ―と、自分の意識がはっきりする。
俺は錯覚していた。
今起きたことは全て空想で、嘘で、夢なんじゃないかって。
「エリ・・・エ・・・?」
体が小さく震えているのが分かった。
「エリエ!」
でも、目の前にある“紅”は現実だった。
横たわっている彼女も、現実だった。
小さな体を抱きしめ、呼びかける。
「エリエ!・・・エリエ!!」
と、エリエの目がゆっくりと開く。
「・・・シャイ・・・ン・・・?」
「何で逃げなかった?・・・逃げろ・・・って・・・」
エリエの顔を見ていられず、目を伏せる。
「・・・泣いていたから。悲しい顔で・・・ずっと・・・今も・・・泣いていた・・・から・・・」
そう言って俺の頬に手をそえる。
「そんなこと・・・!俺は・・・お前を・・・!!」
エリエを見た。
二人の目がやっと合う。
「助けたかった・・・助けられた・・・かな?」
エリエの目から涙が一筋流れる。
「・・・あぁ、・・・ありがとう・・・」
俺の目からも涙が一筋流れる。
「よか・・・った・・・シャインは・・・絶対・・・生き・・・て・・・」
エリエの目がゆっくりと閉じる。
「・・・エリエ?」
その目が再び開くことは、
「おい!目を開けてくれよ!」
なかった。
その時、抱えているモノが、少しずつ体温を失っていくのが分かった。
これが生命の死だた、気づきたくなかった。
ずっと呼び続けてた 声が枯れるほど呼び続けた
私の名前を キミの名前を
もう私はいない もうキミはいない
何も出来ない 話すことも出来ない
ずっとアナタの側にいたかった ずっとキミの側にいたかった
ずっと笑顔の私でいたかった ずっと笑顔のキミが見たかった
アナタとの距離は遠いけど キミとの距離は遠いはずなのに
ずっと言いたかったこの想いが届きますように 暖かい風が伝えた
―――大好き―――
涙は、止まらなかった。
end・・・・・・・
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