辺りからはざわめきが消え、『無』になった。

体に闇が、力が溢れている。ソレが騒ぎたいと心に働きかけてくる。



そんな力を奥歯をかみしめ、必死に押さえ込む。






こんな所で・・・闇を・・・暴走させるわけには・・・!






「へぇ〜よく耐えてるね。『ディプリシティ』だから、かな?」



声からして男のようだ。

しかし、そんなことを気にして入られない。

そいつは闇を取り巻き、続ける。






「でも、それもここまで」






ドクッ・・・ン――!!



闇が体に広がっていく。


体を両足で支えられなくなり、片ひざをついてなんとか耐える。






「そうそう。僕がここに、君のところに来た理由を教えてあげないとね」






俺自身の意識が混濁するその中、そいつの声が頭に響く。

まるでからかっているような、そして明るい声。






「僕はね、君に手伝ってほしいんだよ。・・・再びS・G戦争を起こすために・・・」






どういうことだ・・・それは・・・






「僕は命令に従っているだけ。詳しいことは聞かされてなくてね」






何も言ってないのに、そいつは俺の心を読んだかのように続けて言った。

その俺の心では、小さな、しかしとても重要な戦いがあった。











[どうしてオマエは闇を開放しない?]

[その闇がどれほどのものか分からない]

[なら、今それを試すべきだろう?]

[ここじゃあ、皆に迷惑がかかる]

[なぜそんな心配をする?]

[ここが俺の居場所だから]

[オマエの場所はここではない。『ディプリシティ』なのだから]

[それは関係ない。皆は受け入れてくれた]

[偽りの世界かもしれない]

[そんな事はない!]

[なぜそう言いきれる?]

[それは・・・]









そこで急に、辺りからは『無』が消えざわめきが戻った。






「あれ、結界解けちゃった」






周りにはローブに身を包んだ者達が集まり、呪文を唱える。

男は臆する様子もなく、さらに続ける。






「まぁ後は闇がいるからいいか・・・な」






俺の周りの闇は、それに答えるかのようにざわめく。

その隙に魔族の足元に六芒星が描かれ、輝く。






「大人しくしろ!」

「・・・月並みなセリフだなぁ」






魔族はゆっくり左手を前方へと動かす。






「!!なにっ・・・!?」






六芒星に囲まれたら相当な力がないと動けるはずがない。

つまり、そいつはそれだけの力を持っている魔族だということだ。

動作は遅い、そしてヤツの顔は、笑っていた。



・・・っ!まずい!






「っ!逃げろ!」

「遅いよ」






闇になんとか耐えつつ叫ぶが、魔族は黒い矢のようなものを出現させ、ローブの集団に攻撃する!






うわあぁっっ!!!





いくつもの悲鳴が重なり、攻撃された者のほとんどは倒れ、瞬時に防御した者もダメージが大きかったのか息を荒くする。

術者の集中力が切れたせで、六芒星の輝きもなくなり、消える。

魔族に再び自由が戻り、黒い羽を大きく羽ばたかせた。




片ひざをつき、ヤツを見上げている俺の目には、空が漆黒に染まったかのように見えた。






「長居は無用・・・っと。じゃあ、またな・・・シャイン・ハーツ」






そう言い残すと高く跳びあがり、彼方へと飛んでいく。

少し送れ、何人かがそれを追いかける。


俺も追いかけたかったが、意識がだんだん薄れていってできなかった。

このままでは何をしてしまうか分からない。






魔族の近くにいると闇が反応し、制御するのが難しくなってしまう。

なんとか魔力を振り出し、魔族とは反対方向に飛び立つ。






「おい!?待て・・・っ!」






闇があるせいか、そのスピードは普通より速い。

追ってくるものと、どんどん距離が離れていく。


早くその場から離れたかったからよかったと言えばそうだが、“闇のおかげ”だと思うと素直に喜べない。






魔力を使ったせいか、すでに意識が危ない。

もう少し先に行ったら下に降りて気を静めないと・・・


















俺は俺≠ナありたい。




自分を見失いたくない。









絶対に――










あとがき
とうとう闇が活動してくるようです。
シャインは半分は【魔族】だから、闇を受け入れやすくなっているんですよね。
闇の精霊とは【魔族】と一番相性がいいだけで、他の種族が使えないというわけではありません。
(悪の)害が全くない精霊もありますからね。
ですが、今回の闇はけっこうややこしいヤツなんです。
あの【魔族】と一緒にいたという事を考えれば、何となくわかるでしょうか・・・?

次回ですが・・・
ぜひ、お手元にハンカチの用意を。

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