*夏の暑い日







「あーつーいー」




それは夏の暑い日の午後、クラウザ邸。


記録的な猛暑で、今日の外の気温は36℃。

家の中で一番マシな一階も大して変わらない。

いつもなら冷気を蓄える装置で何とかするのだが、それが現在故障中。


クラウザが、しょうがないと笑って修理に出した。










「あーつーいー」






「って、うるさいテリア。お前何回目だよそのセリフ」


「少なくとも30回以上」


「・・・・・・・」






だいたいでも数えていたのかよ・・・




「だって暑すぎなんだもの。こういう時に装置が修理中なんて最悪」


「町に行けば涼しいところがあるだろ」


「もしかしたら今日戻ってくるかもしれないし・・・第一そこに行くまでが暑い・・・」


「子供か、お前は」






と言うものの、俺もそこまで行くのが嫌だ。


ここクラウザ邸は、近くの町まで結構ある。

それに外はもろに日差しを浴びるのでもっと暑い。



さっき言ってた冷気を蓄える装置だが、ただ単に特別なガラス瓶に魔法石を入れた代物。

魔法石はその名の通り魔法を吸収・発散する効果がある。

魔法石に冷気の魔法をかけ、そのガラス瓶に入れればそこから冷気が出て涼しくなる、という仕組みだ。


別に装置がなくても冷気の魔法を出せばいいじゃん、という人は甘い。

そんな事をしたら冷気が行き所をなくし、部屋中が凍ってしまう可能性がある。



ちなみに、普通の石に冷気魔法をかけて冷たくすることも出来る。

持っていれば冷たく気持ちいいのだが、持続性がないので早く元に戻ってしまう。

それにその方法だと全体が涼しくならない。

大きな石があれば少しは違うかもしれないが、この辺にそんなに大きな石はない。

念のため。




暑いからって騒いでいれば余計暑くなる。




俺は少しでも風が来て涼しそうな窓辺で読書。

テリアは椅子に座り、机に突っ伏したまま動かない。














コン、コン








「こんにちはー」






「はっ!もしかして!」






テリアは勢いよく椅子から立ち上がり、ドアまで走る。






「修理完了しました。あとこちら、今回の魔法石は前回のと変えましたので・・・」



「分かりました!お疲れ様です」






さっきまでの態度が嘘のような笑顔で対応している。



・・・かなり嬉しそうだ。



早く装置を使おうと、何か言いたそうな彼を置いて自分の世界に入っている。








「えっと、あの、説明書をよく読んで下さいね!」


「はーい」








彼は、大丈夫かなという目をしながら帰って行った。






「さて!早速取り付けよう!もう暑くて我慢できないよ!」






慣れた手つきでふたをはずし、魔法石を取り出す。




「はい」




俺の前に魔法石を置き、なにやら待つテリア。








「・・・何だよ」


「え?だってシャインのほうが冷気魔法得意だし、私より魔力があるじゃん」


「それはそうだけどな、まだ魔力が完全に扱えないんだよ。だから、俺は無理」




俺を静まらせるためにクラウザが使った魔法。


そのせいで未だに魔法がうまく扱えない。

なかなか厄介な魔法をかけてくれる・・・








「えー、まだダメなの?」

「文句ならお前の師匠に言え」

「分かった分かった。じゃ、あたしがやりますか」




魔法石に手を当て、呪文を唱える。

ヒヤッ―とそれを中心に冷気が広がる。

急いで装置の中にしまい、ふたを閉める。






「はぁ・・・これで涼しくなる」


「便利なもんだな・・・もう結構涼しい」


「天空にはなかった?」


「いや、似たような物はあったけど。そもそも、こんなに暑い日続かなかったし」


「へぇー・・・、ん?」








テリアが装置に近づき、なにやら渋い顔をしている。






「何?魔法石が変に光って・・・光らなくなっちゃった」


「は?・・・本当だ。えっと、説明書は・・・」






どこだ?

さっきテリアが受け取って机の上に置いたはずなんだけど・・・

あ、下に落ちてるし。


何々・・・





『たまに魔法石が不規則に光り、そのうち光らなくなる場合がありますが、
それはこの魔法石の特徴で、光っていないのは冷気が十分ということの印なので、
絶対に何もしないでください』




・・・・・・・










「テリ・・・」


「もう一回!」






俺の言葉とかぶり魔法を唱えたテリア。






―ヒヤッ・・・―




部屋中にどんどん冷気が溢れ、壁が凍り始めた。








「えーー!?何、どうして!?」






さ・・・寒いって・・・

息が白い・・・








「テ・・・テリア・・・」


「なんでこんなに寒くなるの・・・あ、そういえばさっき何か言ってたみたいだけど・・・何?」






こ・・・こいつは・・・












もちろんその後、装置はまた修理に出すことに。




また同じことの繰り返しになったのだが・・・








クラウザの笑顔だけは、違う気がした。











fin・・・













あとがき
まぁ・・・説明書はよく読みましょう、と・・・
碧依の実体験を微妙に含んでおります。
うーん、ちょっと微妙かもしれない・・・(汗)
何か、最近私が描くクラウザさんは妙に黒い・・・

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