*姉*







「姉ちゃん、軍に入るのか?」



部屋で荷物をまとめていた姉にそっと声をかける。



「うん。しばらくは帰ってこられないかも」


「じゃあ!剣の修行はどうすんだよ!」



フェイトにとって姉がいなくなるという事より、剣の修行が出来ないことが不満らしい。



「最初はあまり帰ってこられないと思うけど、そのうち家から通うから大丈夫よ。
それに、基礎はもう教えたんだから、後は自己流で修行、ね」



軍に入りたては軍の施設に泊まり、家になど帰れない。

家に帰る、家から通えるようになるのはもう少し先になってしまう。

フェイトは下を向いたまま黙っている。


不満だ、という雰囲気が彼の周りを離れない。


そこでチハヤは悪知恵を働かせた。



「私も自己流で頑張ったから、フェイトより強くなったんだろうなー」



――ピクッ・・・



フェイトの耳が小さく反応したのを、チハヤは見逃さなかった。






・・・・・・・・






恐ろしいほど静かな時が過ぎる。

そしてそこにチハヤのとどめの一言。



「世界にいる剣豪は、みんな自己流で修行しているっていうし。あ、でもフェイトは誰かに手伝ってもらわないと強くなれないかな」



『強くなれないかな』



その言葉がフェイトの頭にこだまし、彼の感情に火をつけた。



「オ・・・オレは実力があるからな!自分だけで修行したほうが強くなれる!絶対!」


「はい、よろしい」



実のところ、チハヤは自己流などではない。

一応、師と呼べる人の下で修行していたのだが、それはそれ。

子供って単純だな〜と思いながら、再び荷物をまとめる。

彼はまだ部屋を出て行かない。

というか、何かを言おうとしているが、なかなか言えないらしい。

そうしている間にチハヤは荷物をまとめ終わった。



今、今ここで言わないといけない。―そんな気がしたのか、ようやくフェイトが口を開いた。



「絶対に、帰ってきてくれよな」



寂しいやがりな弟だなと、優しく笑う。

そのうち家から通うようになるのに。が、彼が言ったのはそういう意味ではなかった。



「この世に、って意味・・・・・・や、やっぱり何でもない!」



そう言うと走って行ってしまった。



『この世に・・・』



チハヤは最初、どういうことなのか分からなかった。

いや、分からないフリをした。

本当の意味が分かると、嬉しくて涙が溢れそうだったから。




この世に帰ってきて欲しい・・・




ここにいられるのは自分が生きている時のみ。

つまり・・・この世からいなくならないで生きていて欲しい、生きて帰ってきて欲しいということ・・・







絶対に帰ってくるよ。



大切な家族を守りたいから軍に行って、そして帰ってくるよ。







行ってきます――



















あとがき
久しぶりに不満だらけの小説が出来上がりました(オイ)
私には兄、姉がいないので下の気持ち、というのがよく分からないので・・・
でもやっぱり寂しいんだろうなーな感じで書き上げました。どうでしょう??
今後はフェイト中心に書いていこうと思います。
本編では、周りに比べて影が薄いのでここで頑張ってもらいましょう(笑)

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